タンゴの節句2006#4

アクロスの変

やってきましたアクロス福岡。ここは毎年いい感じ。だいじょうぶって、と思ってたらこれがオオマチガイ。音響、ピアノ、とってもうまくいかない。

とにかくやらねばならぬ。本番前、いわつ母、毎年恒例の手作り楽屋弁当をどっさり届けてくれる。最高にうまい。ありがたや、最敬礼。

でなんとかそれなりに楽しんで演奏し、お客さんにもなんとか楽しんでもらって昼公演を終えると…なにやら不穏な空気が楽屋に。本番中になにやら問題発生らしく、ルイザは完全にメイク落として衣装はバッグの中に完全にしまいこんじゃった。あらら。このままだと夜公演はケンジ&リリアナだけ?えらいこっちゃないかいな。

でもケンジさんすうっと寄ってきて「おんもしろいことになってきたんねええええ。こういうどうなるかわからない状況、楽しいねええええええ」だって。ぞぞぞ。わはは。さすが。

で、夜公演前。アタシ谷本といわつなおこは蕎麦を食いに行く。するとそこにケンジ&プルポ合流。ウマイウマイと蕎麦を食い、プルポはワサビと下ろし金を買い求め、どうやらルイザへのオミヤゲにする模様。プルポ、動く。

で、すんごく仲直りしてすんごく仲良くなっちゃう。ワサビ効果テキメン?どないやねん。よかったよかった。本番中もすごく幸せそうなルイザ。そしてライブ中自分たちの出番でステージにあがり際、われわれのところに寄ってきて一言二言笑わせていったり、ハジケるプルポ。まるで何か憑き物が落ちたかのようにライブを楽しむプルポ。

音響もうってかわってよくなった夜の部。一体ナンだったんだ昼間のアレは。

ということでウチアゲは鮮魚市場会館の「海鮮」。そう、ケンジさんはここでプルポに蛸の刺身を食わせたい、と思いついてこのツアーへの彼らの参加を実現しちゃったんですよ、ええ。何食べたっけなあ。前日に着いた東京からの友人たちも一緒に。とにかく、楽しかった。

 

番外編【3】和な一日

5/6は楽日前の休日。蕎麦でも食わんとて富野の「花れ」へ。どうしても音を立てて蕎麦をすすることができないルイザ。その後ゲタを買いに行く。抹茶アイスを食べに行く。翌日のライブ飛び入り予定のリマタンゴ広沢リマ哲ちゃんも合流して、なんだか日本人離れした店員みたいになってる。和やかで、静かで、和な、オフ日。

 

そして千秋楽

やってきました今年もツアーの千秋楽は下関!下関酒造「酒庵・空」でのタンゴショウ!毎年ここは最高の盛り上がりを見せる。おいしいお酒が試飲価格でどんどん呑める。フク寿しやらおでんやら、最高のおつまみがある。

出演者、会場入りしてまずは試飲大会。あれもこれも呑み比べ。何しとるこっちゃら。だってファンダンゴスの名前入り特製ラベル付き吟醸酒があったりするんだもん。ああこりゃこりゃ。すんません裏方スタッフ懸命に働いてくれてる最中に。最低。

リマちゃんに佐藤美由紀ちゃんもやってきた。ちょっと呑んで既に少しおもしろくなっているみゆきちゃん。リマちゃんが盛んに「もう呑むなってば」と止めている。

2人には2部の途中に2曲ほどやってもらうことに。「マレーナ」と「リーベルタンゴ」に決定。そして最後に「ラ・クンパルシータ」のセッションを、という段取りに落ち着く、はずだった。

ところがそのリハ中にハプニング。リマちゃんが何の気なしに吹いた「オブリビオン」に何となくファンダンゴスが即興で合わせたのが運のツキ。ケンジさん飛んできた。「いいねえ、本番でやんなよ」「ええ?そんなムチャな。一度も弾いたことない曲ですよ」「へええファンダンゴスともあろうものがしり込みするんだあ」ぬぬぬ。するとルイザもまろび出てきた手を合わせて懇願する「この曲で躍らせて!お願い!」 「へえええええファンダンゴスともあろうものが」「お願い」「へえええ」「お願い」えええいもう!わかったやりますよやりゃあいいんでしょ。

てことで急遽、ピアソラのオブリビオンをセッションすることに。そしてプルポ&ルイザが踊ることに。そして前日まで彼らが踊っていた「ブエノスアイレスの冬」はケンジ&リリアナが踊ることに。物凄豪華。

そして本番。何も言うことなし。とにかく、とにかく楽しい一夜。最高の、千秋楽。プルポ&ルイザは最高の踊りを見せた。もっとも深く、そしてもっとも楽しんだこの夜の2人。うれしかった。

リマタンゴの2人は最高だった。リマちゃんと出会ったのはテント渋さ知らズにアタクシ谷本が飛び入った1997年のこと。9年を経て、不思議にも我々のツアーにリマちゃんが飛び入り、タンゴを吹いてる。信じられない光景だ。美由紀ちゃんとは二年半前初めて東京ツアーしたときに出会った。彼らが演奏しているのをステージ脇で見ているうちに、涙が溢れた。不思議だなあ、こんなことがあるんやなあ、嬉しいなあ…。夢のようだった。

そしてケンジ&リリアナは、やっぱり最高だ。今回のツアーで最初で最後の彼らの「冬」。ほんとうに美しかった。演奏しながらまた、涙が出た。なんだかホロリホロリの下関。何よりも、彼らは人を幸せな気持ちにしてくれる。その柔軟さ、その懐の深さ、その表現の幅広さ。本当に素敵な人たちだ。

下関で活躍したのは会場に溢れるお客さんをミゴトに収容する客席を設計設営したピカラックのたにせみき(彼女は小倉・博多公演でもミゴトな客さばきをみせた!ブラボっ!)、そしてその手足となって働いた(こき使われた)広島の芝居ユニット「アリノネ」の皆さん。彼らとは3月に広島で「新しい天使 ~月に一番近い丘まで~」という芝居で一緒に組み、そして10月6-8には小倉で再演が決定している。彼らが芝居の舞台設営でなれた腕を振るってくれたおかげで、約190名ものお客さんがこの素敵な千秋楽を楽しむことができたのだ。本当にありがたいこと。

ウチアゲは0次会を現場で、1次会を門司港バルクで、そして2次会を小倉の居酒屋ぶんぶんで。

未明、居酒屋の裏の駐車場で、みんなと別れる。仲間だ。友だ。そして、家族だ。みんなお互いに抱き合って、ありがとう、ありがとう、と繰り返してる。こんなス的な人たちに囲まれて、ファンダンゴスは何て幸せなんだろう、と心から思う。

タンゴの節句ツアー2006、終了。ああ、終わっちゃった。楽しいことはあっという間に終わってしまう。でも、確かな手ごたえが、残ってる。

そいつをもって、ブエノスアイレス。行ってきます!

そしてまた来年も、タンゴの節句をどうぞ宜しく!!

タンゴの節句2006#3

小倉はチガウ(6/2)

さて、ついにやってきました小倉の北九州芸術劇場小劇場公演。ここでの見ものは「照明」。時佐勝氏に腕を振るってもらう。今回はピンスポットは使わない、暗めの明かりで行きたい、と事前に伝えた。これが大成功。渋~いステージになりましたわいな。

去年に続き2回目のこのホール。ところがお客さんの反応がクールで静かだった前回とは全く違うものだった。熱いのだ。ダイレクトでストレート。ダンサーの一挙手一投足にお客さんがすばやく反応し、曲の最中でもどんどん拍手が起こる。そしてダンサーの加わらないトリオのみの演奏時の拍手も、曲を追うごとに大きくなっていく。トリオ・ロス・ファンダンゴスにとっての「地元」の北九州。「いいぞ!」とこんなに言ってもらえて、ただただ幸せ。もちろん結成から7年、我々の演奏やショウも、変わってきたのかもしれない。CD「3」も確かにこれまでとは違っている。そういえばこの公演ではMCも極めて短くコンパクトにし、次々に曲をたたみかけるようにやったのも、よかったのかもしれない。

そんな中プルポ&ルイザのダンスもますます深みを増す。照明がその世界をさらに奥深いものにする。悲しきミロンガでのリリアナ&ルイザの悲しみの表現も凄みを増す。今回のツアーは、この公演で明らかにひとつの山場を迎えたのだった。

ステージがますます楽しくなってきたのもこの公演。なんとケンジさん、ついにステージで喋り始めた。普通ダンサーはタンゴのショウでいきなり喋り始めたりしません。でもタンゴの節句は、何でもアリ。そう、楽しむためなら!曲は勿論「首の差で」。楽屋で即席に作った馬券の束をお客さんに見せながら、まだこの曲についてのMCがなされている途中に登場、「今はもう競馬じゃないよ。株だよ。日経平均が1万7千円を超え云々…ぼくは株で儲けて馬券を買うんだ」なんて言ってる。思わずこっちも「そんなこと言ってライブドアで失敗するんでしょ」とアドリブを入れる。「なんでそんなことここで言うの」と半分素に戻ってみせながらケンジさんが応じる。客席、爆笑。そう、こういうの、待ってた!

そうこうしているうちにリリアナ登場。この曲の衣装はお母さんのスーツをリフォームしたすこしクラシカルなもの。これがまた似合う。チャーミング。芸術劇場でそれが一層、映える。

プルポはこの日「首の差で」の登場の場面でサングラスを着けてでてきた。そしてそれはこの後、楽日まで続く。深い表現をもっと、と追い求めながら、楽しむということもし始めたプルポ。

終演。ものすごい圧力の拍手。本当にありがたくて、うれしかった。

しかし終演後、プルポ&ルイザは悩んでいた。プルポにとってこの日のステージは必ずしも思い通りではないものだったらしい。苛立ちをみせる彼。「一所懸命やったのよ、でも…」と涙ぐむルイザ。

いいや、素晴らしかった!よかったよ!と我々は2人に声をかける。しかし、周りにどういわれるか、ではなく、自分たちがどう思うか。それがプルポにとっては重要なのだ。より深く。自分たちが目指すものに少しでも近づこうとして。ここへ来て、彼自身はギヤチェンジをし、何かを変えようとしていたのかも、しれない。

さて、ウチアゲ。4/28に続き、八幡西区の「明月」へ。ところがそう、プルポはすでに実は焼肉飽和状態だった。そのことは後で知ったのだけれど。で、そんな彼の状態をヨソに、やっぱり、食って、呑んで、食ってしまった。明月最高っ!特製マッコリ最高っ!ファンダンゴス、最低っ!ごめんねプルポ。

 

番外編【2】門司港レトロ祭

5/3のオフ日を挟んで5/4は、レトロ祭で賑わう門司港へ。イタリア料理店の「バルク」でのライブに臨む。店の裏側は関門海峡を望むオープンテラスになっていて、その一角がステージ。セッティングまでの時間が空いていて、お祭見物。人ごみの中を出店を眺めて歩く。いい天気、日差しが強く、暑い。思わず「生ビールちょうだい」とか。プルポはたこ焼き屋の屋台を気にしていたり。プルポって蛸という意味なんですもんねこれが。で、昼ごはんは元祖瓦ソバ。うまうま。

さて、バルクに戻ってセッティング。そして簡単なサウンドチェック。軽く音を出すと、すでに拍手が起こる。いや、あの、まだですから。市政だよりにも載ったというこのライブ、演奏開始予定時刻には、テラスの外側の遊歩道に鈴なりの人だかりが。みんな期待に満ちた顔で、今や遅しと待っている。

「お待たせしました!トリオ・ロス・ファンダンゴスでございます!」と演奏開始。んんんタノシカルカル。ケンジさん「踊るのは2曲程度だから」なんて既に心にもない事を言っている。勿論、結局2曲おきに出てきて、2曲連続で踊ったり。遊歩道の石畳の上でガシガシ踊ったりしている。遠く離れた彼らの動きを目で追いながら、最後のキメを合わせたり。見てるねえー。

プルポは今日はオフと決め込んで、休んでいる。ルイザは踊りたくて仕方がない。その気配を察してケンジさん、ルイザを誘ってミロンガを踊る。プルポ&ルイザでは見られない光景。ルイザの嬉しそうなことと言ったら!顔だけじゃない。体中が、ダンスが、嬉しそう。ぼくらも幸せな気持ちになった。

終わってからは散歩したり、ゆっくり飲み食いしたり。日が暮れて、夜になって、そのまま夕食もバルクで食べて呑んで。花火も見て。おいしかった、楽しかった、の門司港の一日。

タンゴの節句2006#2

初日は温泉でタンゴ!

初日(4/29)、会場はなんと温泉!大分県中津の金色温泉の中にあるラウンジ&ギャラリー「ザリ」にて昼夜2公演。ここは料理もうんまくて。おっとやっぱりそっちに記憶と話題が偏るなあ。お昼はナント「端午弁当」。わはは。やりますなあ。

昼の部はツアーの幕開けでもあり、いわば手探りの部分もあってスリリング。プルポ&ルイザはとにかく早く出てきたがるのでびっくりする。こっちは時々曲間に喋って笑わせたりするので向こうは向こうでびっくりしてる。こっちは着替えができているかどうか間合いを測りながら喋っているのだけれど。何せ、普通のタンゴのショウではありえない数、ダンサーたちが踊るのがこのタンゴの節句ツアーの見ものなのでありますからな、おほほ。

昼の部は天窓から陽の光が床に落ちたりして面白い。新曲ガジョシエゴを初めてプルポ&ルイザがしっかりと踊る。うむむ、やはりすごいなあ。おもしろい。ルイザ&リリアナの悲しきミロンガの即興ダンスも鳥肌モン。そして「首の差で」。うはは、やっぱり面白い。これはきっとツアー中にもっと面白くなるだろう、と思う。

休憩中は散歩したり食事したり、ちょっと昼寝をしたり。そして夜の部。やはり周りが暗いと集中する雰囲気。でもみんなとっても楽しんだ。

終演後プルポがひとこと「なんでこんなにたくさん演るんだ?」。いきなりのダブルヘッダーでバテたかな。まだまだ始まったばっかりよおおおん。お客さんと一緒に腹いっぱい楽しむんだよおおおおん。

終演後はゆっくり温泉に浸かる。ふぃー。ありがたや。

あがってから足マッサージに興じる日亜男性ダンサーチーム。

ちなみに調律助手で来てたMさん、帰りがけに調律士オッチーに一言。「あの…本番終わってから来られたあの方はドナタでしょう。お風呂上がって体操してらして、ケイトミュージックのスタッフの方か誰かでしょうか、とっても場に馴染んでらっしゃったので…」。勿論それはメイクを落としたリリさんでえす。右写真中央、どすこいのヒトね。いつもながら、わっはっは。

 

番外編【1】ミロンガ

4/30は天神ティエンポでミロンガ。タンゴの節句ツアーの番外編ですわい。プルポとルイザ、ケンジとリリアナはタンゴダンスのクラスで指導後、ミロンガで踊る。お、オスカルとリンコもやってきた。相変わらず大きいなあ。うんプルポ&ルイサのダンスはさすがに重厚ですなあ。おほほ、ケンジ&リリアナはやっぱり楽しい。おや、後半はなんと次々に3組が踊る展開に。わはーおもしろいー。
…の一夜。

 

筑豊 de タンゴ!

さてツアーに戻って5/1は飯塚のフランス料理店「ふらんす亭」。早めに入ってまずはランチ。ステーキね。エスカルゴもね。ワインもね。うまいうまい。

その後調律や音響、照明でスタッフががんばってくれている間に…、近くの電器屋さんに。そこにはずらりとマッサージチェアが並んでて。いやあ、ゴクラク。熟睡してるヒトもいましたですよホンマ。

プルポは色んなモノを欲しがる。日本の車のナンバープレート。これはムリでしょ。鯉のぼりだの、日本の家の樋からぶら下がっている鎖のようなアレ、正式名称なんだっけ「鎖縦樋」だっけかな、それだの。色んなツテで入手を試みる。

そしてリハーサル。ところが…。気の早いご婦人方、続々やってきて、入ってきちゃう。ちょちょちょっと待ってぇぇぇ。開場時間までまだ小1時間ありますがな。ネタバレしますがな。

さて、いよいよ本番。くだんのご婦人方は大盛り上がり。伸び上がり立ち上がって見て、ノッて、笑って、入り込んで。うれしくなっちゃう。

しかし飲み食いとおしゃべりの方が忙しいお客さんもいる。中には喧嘩に発展するカップルなんかもいて。ほほほ。なんというかこう、最初っからタンゴだからこう、というような決まった聴き方などしない。こっちにゃこっちの都合があるんだ、てな感じ。この「筑豊感」というんでしょうか。それともアラバルな感じというのでしょうか。でも、そういうのはちっとも問題じゃない。ライブやミロンガで鍛えられてきたからね。よっしゃそっちがそうならこっちはこうだ、とばかりにガッシンガッシン。

後半俄然ケンジ&リリアナが燃える。後ろの方の、余りステージのほうを見てないお客さんの所まで行って鼻先でブンブン踊る。仏頂面してるコワモテのおいちゃんにちょっかい出してむりくり笑わせる。さっすがですなあ。

そして結局みんなを湧かせて楽しませて、のワレワレ。芸人よのう。

終演後は、再びおいしいふらんす亭の料理に舌鼓。ルイサはとにかく日本語をガンガン覚える。こっちは「イーホデプータ」だの、そんなのしか覚えられない。

タンゴの節句2006#1

始まりの始まり(4/27)

タンゴの節句ツアー2006。4月27日に、ケンジ&リリアナ、そしてプルポ&ルイザ、無事北九州到着。プルポ&ルイザが入国するのにルイザの国籍のあるブラジルの日本領事館やら日本の外務省やらがとにかくややこしい手続きを要求したらしく、一時は来日が危ぶまれ、チラシやらチケットやらスケジュールやらすでに動き始めた後で我々実は青ざめたのでありましたが、なんとか全てうまくいき、無事来日、北九州入り。ケンジ&リリアナ御両名、そしてなんどもアルゼンチンからブラジルに足を運んでくれたルイザ、本当にありがとうございました。

さて4月27日は顔合わせと簡単な打ち合わせなど。直方のイタリアンレストラン「レンピッカ」へ。ここの料理は最高。タンゴの節句の会場として一昨年はここで昼夜2公演をさせていただいたのでした。

うまいものを食いながら、打ち合わせなど。ピアノ弾きとアコーディオン弾きの連弾なんかも早くも飛び出して。ええと今日は何のウチアゲだっけ。そうか入国か。めでたい。さあ、始まりの始まり~。

 

始まりの準備(4/28)

つまり、リハーサル。毎年、このリハで、ツアーで演る曲目や順番段取りが大体決定する。ケンジ&リリアナのダンスをどのように配置するか。我々だけの演奏はどうするか。曲の雰囲気や前の年のツアーでやったことなども勘案する。

それに加えて今回はプルポ&ルイザが絡む。彼らのダンスがどんなものなのか、楽しみにしてリハに臨むが、余り踊らず。疲れもあったのだろうと推察。ところがショウの終わりのお辞儀の仕方については入念にリハをやろうとする。オモロイ。

「悲しきミロンガ」は、リリアナ&ルイザが踊ることになる。

そして「首の差で」の段取り。振り付けをなんとワレワレが大胆にもケンジ&リリアナとプルポ&ルイザに提案。曲は恋のさやあてを演じて若い恋敵に恋人を奪われ「首の差で負けた」と負け惜しみを言う男の歌。初めにリリアナ・ルイザと両手に花で踊るご機嫌のケンジさん。そして最後にちょい役で出てくるカッコイイプルポに2人とも奪われて、ケンジさんはポケットの馬券をちぎって宙に撒き、がっくりうなだれて終わる、という段取り。リリアナとルイザはケンジを巡って三角関係を面白おかしく演じよう、と早速ストーリーを膨らませる。こうやってどんどん面白くなっていくのが、楽しい。今回のハイライト!

で、めでたく大体決定したので、打ち上げ。リハの、ね。焼肉の名店、八幡西区鷹巣の「明月」へ。プルポ&ルイザには前日、「食べられないものはある?」と尋ね、「なんでもOK」という頼もしい返事を得ていた。万が一ワレワレのウチアゲに文化衝撃を受けるといけないと思ったので確認したのだけれど、どうやらこのアタリですでにネをあげかかっていたらしい。あ、やっぱり?ごめんね。プルポ。

…それでも構わず食うのであった。

ブエノスアイレス2006 #4

最後の日々

最後の演奏は、帰国の途に就く前日の6月18日。ブエノスアイレス市内の観光名所のひとつ「日本庭園(ハルディン・ハポネス)」でのコンサート。

散策用の小道の脇には松の木並木。大きな鯉が群れ泳ぐ池の上には橋がかかっていて。この日本庭園の中にある会館のホールが、コンサートの会場。一階には日本料理を出すレストランなどもある。二階のホールは何となく少し古い旅館やホテルなどにある大広間のような風情で不思議に懐かしい。

コンサート直前、ケンジ&リリアナの二人は庭園で、客集めのために踊り、ぼくがヴァイオリンで伴奏をすることに。晩秋のブエノスアイレスはもう肌寒い。風邪気味のケンジさんは衣装の下にセーターを着込もうとするが、不恰好に着膨れしてしまい、渋々セーターを脱ぐ。同様にリリアナさんも風邪気味ではあったが、ステージ衣装そのままの格好で野外で飛び出していく。さすが。

ヴァイオリンでジンタの旋律を奏でながら練り歩く。池にかかった橋の上で2人は踊ることに。ならば、と「ラ・クンパルシータ」を即興で。お客さんたちが足をとめ、嬉しそうに見入る。「これからホールでタンゴの演奏があります。無料ですのでぜひおいでください!」と今回のツアーの段取りをしてくれたダンサーのミホがすかさずアナウンス。お客さんをホールへ誘導する。この呼吸、まさに「一座」であります。

そして最後のコンサートが開演。サンテルモ・コロニアルのイネスの息子さんエミリアーノが通訳を引き受けてくれていて心強いが、ケンジさんはやはりすこし勝手が違うのを感じ取ったらしい。近寄ってきて「いつもの調子でやってえな」などとけしかける。お客さんは楽しんでくれて、演奏もぐんぐん乗ってくる。

大喝采のうちに予定していた曲目は全て終了。「オートラ!オートラ!」アンコール、何をしましょうか、とみんなに尋ねてみる。「ラ・クンパルシータ!」「ミロンガ!」あちこちから声が挙がる中、突如「マーラフンタ!」とケンジさんの声が飛ぶ。しかも日本でこの曲の「前説」でいつもやってた悪代官と悪徳商人の悪巧みトークもやれ、ということらしい。ぬぬぬ、地球の裏側でアレをやるのか、ええいままよ、アンコールだやってしまえ。「越後屋、そちもワルよのう」「いえいえお代官様程ではございませぬ」「なにをこやつ」「ぬわはははははーっ!」ハポンのサムライ番組のマネだ、ということがどれだけ伝わったのかはわからないが、意外にもみんな大爆笑。この部分だけがなんとなんとみほさんのブログにアップされているのであった。コチラ(「ファンダンゴス一座ブエノスアイレス興行」をクリックね)。お客さんを演奏中の笑い声係に巻き込んでの演奏も、これまたオオウケ。

終演後、たくさんの人たちがCDを買ってくれた。ありがたやー。みんな口々に「ムイビエン!」「ムイリインド!」と声をかけてくれる。ブエノスアイレスの人々が本当に喜んでくれたのだ。ほんとうにうれしい、最終公演だった。

終演後。上左:日亜タンゴソニドス、PAゴンサロとエジイ。ゴンサロはツアーに同行したエジイと完全に意気投合。こっちで一緒にタンゴのPAの仕事やろうや、なんてもちかけてた。にゃはは。
右:チノ!今回のツアー中、ミホさんと共にわれわれ3人を父親のような眼差しで見守ってくれた。

リリざーんす!

そして「一座」全員集合。一番左がミホさん。おかげですてきなブエノスアイレスデビューができました。何もかも、ほんとうに、ほんとうに、ありがとう!

後日この日の模様は邦字新聞「らぷらた報知」に載った。

そして帰国当日、空港に向かう直前まで、ドレゴ広場に面したカフェでやっぱり肉を食うのであった。うまー。

「ブエノスアイレスに一緒に行くならファンダンゴスと。ほんとうにそう思ってるんだ。」ケンジさんが静かにそう言ってくれたのが昨日のことのよう。気がついたらほんとうにケンジ&リリアナの2人と一緒にブエノスアイレスの街を歩き、そこで一緒にうまいものを飲み食いし、同じ空気を吸い、そして一緒にタンゴを演ってた。ありがとう、ケンジ&リリアナ。心の底から、ありがとう。ぼくらはほんとうに、シアワセモノです。

かくしてトリオ・ロス・ファンダンゴスの初めてのブエノスアイレスツアーは大成功のうちに終了。行く前にはいなかった友が、今はブエノスアイレスにいる。行く前には知らなかったタンゴが、今はブエノスアイレスに、ある。だから行く前よりも、今のほうが、何倍も何倍も、ブエノスアイレスが恋しい。

チャオグラシアス、ブエノスアイレス!
アスタルエゴ、アミーゴス!

オマケ。ボカ地区カミニートのカフェのモイラちゃんと秋元多恵子。わはは。