タンゴの節句2006#3
小倉はチガウ(6/2)
さて、ついにやってきました小倉の北九州芸術劇場小劇場公演。ここでの見ものは「照明」。時佐勝氏に腕を振るってもらう。今回はピンスポットは使わない、暗めの明かりで行きたい、と事前に伝えた。これが大成功。渋~いステージになりましたわいな。
去年に続き2回目のこのホール。ところがお客さんの反応がクールで静かだった前回とは全く違うものだった。熱いのだ。ダイレクトでストレート。ダンサーの一挙手一投足にお客さんがすばやく反応し、曲の最中でもどんどん拍手が起こる。そしてダンサーの加わらないトリオのみの演奏時の拍手も、曲を追うごとに大きくなっていく。トリオ・ロス・ファンダンゴスにとっての「地元」の北九州。「いいぞ!」とこんなに言ってもらえて、ただただ幸せ。もちろん結成から7年、我々の演奏やショウも、変わってきたのかもしれない。CD「3」も確かにこれまでとは違っている。そういえばこの公演ではMCも極めて短くコンパクトにし、次々に曲をたたみかけるようにやったのも、よかったのかもしれない。
そんな中プルポ&ルイザのダンスもますます深みを増す。照明がその世界をさらに奥深いものにする。悲しきミロンガでのリリアナ&ルイザの悲しみの表現も凄みを増す。今回のツアーは、この公演で明らかにひとつの山場を迎えたのだった。
ステージがますます楽しくなってきたのもこの公演。なんとケンジさん、ついにステージで喋り始めた。普通ダンサーはタンゴのショウでいきなり喋り始めたりしません。でもタンゴの節句は、何でもアリ。そう、楽しむためなら!曲は勿論「首の差で」。楽屋で即席に作った馬券の束をお客さんに見せながら、まだこの曲についてのMCがなされている途中に登場、「今はもう競馬じゃないよ。株だよ。日経平均が1万7千円を超え云々…ぼくは株で儲けて馬券を買うんだ」なんて言ってる。思わずこっちも「そんなこと言ってライブドアで失敗するんでしょ」とアドリブを入れる。「なんでそんなことここで言うの」と半分素に戻ってみせながらケンジさんが応じる。客席、爆笑。そう、こういうの、待ってた!
そうこうしているうちにリリアナ登場。この曲の衣装はお母さんのスーツをリフォームしたすこしクラシカルなもの。これがまた似合う。チャーミング。芸術劇場でそれが一層、映える。
プルポはこの日「首の差で」の登場の場面でサングラスを着けてでてきた。そしてそれはこの後、楽日まで続く。深い表現をもっと、と追い求めながら、楽しむということもし始めたプルポ。
終演。ものすごい圧力の拍手。本当にありがたくて、うれしかった。
しかし終演後、プルポ&ルイザは悩んでいた。プルポにとってこの日のステージは必ずしも思い通りではないものだったらしい。苛立ちをみせる彼。「一所懸命やったのよ、でも…」と涙ぐむルイザ。
いいや、素晴らしかった!よかったよ!と我々は2人に声をかける。しかし、周りにどういわれるか、ではなく、自分たちがどう思うか。それがプルポにとっては重要なのだ。より深く。自分たちが目指すものに少しでも近づこうとして。ここへ来て、彼自身はギヤチェンジをし、何かを変えようとしていたのかも、しれない。
さて、ウチアゲ。4/28に続き、八幡西区の「明月」へ。ところがそう、プルポはすでに実は焼肉飽和状態だった。そのことは後で知ったのだけれど。で、そんな彼の状態をヨソに、やっぱり、食って、呑んで、食ってしまった。明月最高っ!特製マッコリ最高っ!ファンダンゴス、最低っ!ごめんねプルポ。
番外編【2】門司港レトロ祭
5/3のオフ日を挟んで5/4は、レトロ祭で賑わう門司港へ。イタリア料理店の「バルク」でのライブに臨む。店の裏側は関門海峡を望むオープンテラスになっていて、その一角がステージ。セッティングまでの時間が空いていて、お祭見物。人ごみの中を出店を眺めて歩く。いい天気、日差しが強く、暑い。思わず「生ビールちょうだい」とか。プルポはたこ焼き屋の屋台を気にしていたり。プルポって蛸という意味なんですもんねこれが。で、昼ごはんは元祖瓦ソバ。うまうま。
さて、バルクに戻ってセッティング。そして簡単なサウンドチェック。軽く音を出すと、すでに拍手が起こる。いや、あの、まだですから。市政だよりにも載ったというこのライブ、演奏開始予定時刻には、テラスの外側の遊歩道に鈴なりの人だかりが。みんな期待に満ちた顔で、今や遅しと待っている。
「お待たせしました!トリオ・ロス・ファンダンゴスでございます!」と演奏開始。んんんタノシカルカル。ケンジさん「踊るのは2曲程度だから」なんて既に心にもない事を言っている。勿論、結局2曲おきに出てきて、2曲連続で踊ったり。遊歩道の石畳の上でガシガシ踊ったりしている。遠く離れた彼らの動きを目で追いながら、最後のキメを合わせたり。見てるねえー。
プルポは今日はオフと決め込んで、休んでいる。ルイザは踊りたくて仕方がない。その気配を察してケンジさん、ルイザを誘ってミロンガを踊る。プルポ&ルイザでは見られない光景。ルイザの嬉しそうなことと言ったら!顔だけじゃない。体中が、ダンスが、嬉しそう。ぼくらも幸せな気持ちになった。
終わってからは散歩したり、ゆっくり飲み食いしたり。日が暮れて、夜になって、そのまま夕食もバルクで食べて呑んで。花火も見て。おいしかった、楽しかった、の門司港の一日。