Archive: 4月 2022

中田リリアナさやかさん 番外編(2022/4/15)

番外

「おっ?反抗期か?反抗期か!そうか、そうでもええ。ええがな、呼ばれたら返事せええええ!」

バイオリン奏者は素敵なダイナマイト妻との間に5人のラブリーな子供がいる。
孫もいる。

南小倉パプテスト教会で日々ひなたの道を探している。

「ちゃーちゃっちゃちゃー
ちゃっちやっちゃー
ちゃんちゃんちゃんちゃんちゃー」
と眠るピアノ奏者の耳元でイントロを歌うと
ガバ!と跳ね起き 
「うーっわさをしんじちゃいっけないっよう」

完璧なアクションで熱唱する。

ピアノ奏者はケイトミュージックという夢の小箱のような場所で微笑む。

なぜ音楽はかくも素敵なのか

コーヒーとぶどうパンのおいしさ

あの場所に今すぐ行きたい。

新ページ What friends say about the band スタート! 

What friends say about the band、つまり「友人たちがこのバンドについて言うことにゃ」のページが始まりました。これから次々に色んな友人たちがトリオ・ロス・ファンダンゴスについて好き勝手に語ります。どうぞお楽しみに!記念すべき第一弾はダンサー・ケンジ&リリアナのリリアナ師匠!なんと一気にどどーんと長編三部作!だってもう20年以上のお付き合いですから。どうぞお読みください!

中田リリアナさやかさん 3(2022/4/14) 

「はじまったねえ」

楽屋の隅、床に置いた座布団に寝かされている女の子が、リハーサルの音出しが聞こえてきたその時、ふっと目を開けてつぶやいた。
熱にうかされた赤い顔が、ホーっと笑った。

お父さんは音響技師、お母さんはアコーディオン奏者。タンゴの節句の時期はキーーーっとなる忙しさ。
女の子と男の子は両親の非常事態に影響されて、トンっと高熱を発する。

会場設営前、リハーサル前、両親は代るがわる子供を病院に運び、ライブ会場楽屋に寝かせる。
寂しがるときはお父さんが二人を前後に抱っこおんぶして、会場設営をし、音響チェックをする。
音響お父さんの兄弟従兄弟がふたりを見守り手助けをしてくれる。

「お父さんとお母さんはこれからお仕事です」

子どもたちの目線に合わせて腰をおろし、お母さんは二人の子供に宣言する。

バーンと演奏を終え、お客様に挨拶をし物販をしサインをし一緒に写真を撮り、ようよう楽屋に帰ってくる。

「おつかれさまー!」
晴々とした笑顔のお母さんの声に、女の子と男の子はお母さんに駆け寄り、ようやく抱きつくのだ。

毎年そんな光景を見てきた。
毎年胸がいっぱいになった。
ふたりとももう両親の背丈を超えるくらいに成長し、素敵な10代だ。

まぶしい
うれしい

中田リリアナさやかさん 2 (2022/4/14)

アストル・ピアソラ作曲『天使のミロンガ』

ピアソラの連作『天使のイントロダクション』『天使の死』『天使の復活』に連なる作品。

ピアソラの楽曲に感銘を受けた劇作家A.R.ムニョスの依頼により、舞台「天使のタンゴ」で使われた。
人々の魂を救済しにこの地に舞い降りた天使が、ブエノスアイレスの場末でナイフで刺殺されるという内容だ。

「天使のミロンガを演奏し、ケンリリさんらが踊るにあたり、見てほしい画像がありますねん」(。)
と谷本さんから言われたのは、2003年。イラク戦争勃発の年だったと思う。

凄惨な出来事があった瓦礫のなか、男性が腰をかがめて立っている。
丈の長いイスラムの衣服に身を包んだ老人の腕の中のか細い子ども。
着ているボロボロの衣服の色彩から女の子とわかる。
砂塵にまみれた白い顔は力なく眼を閉じ、口の周りはまだ鮮やかな色の血で汚れていた。

あんまりだ
とは、思った。
思ったが、眼をそらすことができなかった。
長い時間、瓦礫のなかのふたりを見ていた。
女児は死んでしまったのだろうか。
老人はこの子の家族なのだろうか。
こんなめに遭うことを誰が望むものか。

トリオ・ロス・ファンダンゴスの演奏のなかで踊ることが、祈りにとても似たものになってきたのは、おそらくこの光景を画像で見てからではないだろうか。

現在ミロンガで一番踊らせるタンゴバンド、と大人気のトリオ・ロス・ファンダンゴス。
その根本にはいつも光を求めて両腕を差し伸べる、なにか胸掻きむしられるような焦燥と渇望がある。
そう私は感じる。
いろんなことがあるし
いろんな人がいるけど
あの一点の光
信じる光にいつも顔を向けて
行く道を進むのだ。
と、演奏のなか、彼らの咆哮が聞こえてくるのだ。

だからトリオ・ロス・ファンダンゴスと踊るときは祈る。誰かの安寧、誰かの幸福、救い、寛容、歓びをもとめて。